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はぐスリングが出来るまで (MAKI と Yotti の開発秘話 )


運命の日
ある夏の日、 Yotti が奇妙な袋に赤ちゃんを入れ、上の子をベビーカーで連れて電車で里帰りしてきた。
聞けば、首が据わらなくても手を使わず抱っこや授乳が出来て、とてもいいものらしい。
今回 Yotti1 人で子供たちを連れて帰ってくることができたのも、このスリングがあったからだとか。
その夜、子供たちが寝静まった後、
私と母は Yotti がこのスリングを製造して販売する準備を始めているということを初めて知り、とても驚いた。
何でも、仕事から帰って夜な夜な試作したり、アメリカからリングを取り寄せたりしているとのこと。
それでやっていけるのか、と母と 2 人で言ってはみたが、そこは言い出したら聞かない Yotti のこと。
ちょうど私も専業主婦になったばかりのことで、裁縫にはまあ自信があったから、
それならと軽い気持ちで手伝うことになった。
今思えばこれが私の苦労の始まりだった。
納得のいくスリングを求めて
その日から、私と Yotti のスリングの試作が始まった。まずはどこを改良したいか、母も交えて話し合った。
Yotti はポケットをつけたいと主張し、母は持ち運びができる収納袋があると便利だと言う。
それなら、そのポケットに巾着を縫いつけたらという話から、
いっそのことポケット自体に収納してしまおうと決まり、早速試作にとりかかった。
まず私が Yotti の指導のもと、リング式のスリングを縫ってみた。
テール部分が思いのほか面倒で時間がかかる。ポケットの形状を考え、
位置や大きさを何度もまち針で付け直して検討した。
夜中いっぱいかかってようやく 1 つ完成したところで、 Yotti はそのリング式スリングを試しにつけて帰っていった。
しかし、まだまだ改良すべき点はたくさんあった。
神様のくれたひらめき

Yotti が帰って数日後、息子を保育園に送るためにウェストポーチをはめたその時。
私の中であるひらめきが生まれた。

「リングをバックルにしたらどうなの?」
Yotti がスリングを脱ぐ時四苦八苦していたのを思い出し、
バックルならスムーズに脱げるじゃないかとうれしくなった。
すぐに Yotti に電話したら、私の興奮とは裏腹に「バックルだと袋のところが調整できないからムリ。」
と一蹴された。
絶対便利だって!と主張したが、いつも冷めている Yotti はほとんど取り合ってくれなかった。
思いついたらすぐに試してみたくなり、早速バックルを買ってきてあーでもないこーでもないと、
取り付かれたように試作に没頭した。

バックル式試作品第 1 号

運命の日から 1 ヵ月後、再度試作品作りの為に Yotti が里帰りしてきた。
何でも袋を調節できる方法を考えついたらしい。
それは袋の端に巾着のように紐を通し、ポケットの上あたりで巾着の紐ストッパーで絞るというもの。
早速 2 人で材料を買出しに出掛け、子供たちが寝た後に試行錯誤して作り始めた。
作るうちに Yotti が「赤ちゃんの頭がいつもリングに当たるから、カバーをつけたい」、
「授乳の時に丸見えになるから、隠せる布をつけたい」と言い出した。
相談して、カバーはバックルを覆うくらいの大きさにして、肩パッドのところに縫い付けてみることにした。
留めるところは面ファスナーを使ってみる。なかなかいい感じ。
授乳の目隠しは、バンダナサイズの布の端をポケットに縫いつけて、
ようやく明け方バックル式試作品第 1 号が完成した!
今思えば何だコレ !? と思うようなお粗末なものだったが、この時は 2 人とも満足し、
また Yotti は第 1 号をつけて帰っていった。

ダメ出しの日々

ところが、すぐその日のうちに、 Yotti からダメ出しの電話がかかってきた。

「この密着テープじゃ意味ないね。」

ナニ〜 !? 人がどれだけ苦労して作ったと思ってるんだ!大体 Yotti が言ったとおりに作ったんだぞ!
と怒りくるっていると、また次のダメ出し。
「目隠し布もこれじゃ使えないなあ。」

・・・・・・・・・・。

この日から、改良を重ねてはダメ出しをくらうという私の苦難の日々が始まった・・・。

奇跡の密着テープ

改良点についてあれこれ考えていたある朝、さっきまで電話をしていたのに、
また Yotti から興奮気味に電話が掛かってきた。

「密着テープのいい方法思いついた!」

Yotti は密着テープをぐるりと一周させ、バックルで留める方法を私に説明し始めた。
「これなら、長さも調節できるし、バックルの補助にもなるよ!これできっと上手くいくって!」

早速言ったとおりに作って送ると、今度はようやく OK の返事が来た。

夏に作り始めたスリングは、すっかり秋風が吹く頃にようやく納得のいくカタチで完成した。

縫製さんを求めて

形ができると、今度は縫ってくれる人を探し始めた。
Yotti が縫い方を図面に起こし、私の作った現物を持っていろいろな人に聞いて回った。
ようやく母の知り合いのツテで工場を紹介してもらえることになった。
会社では営業職だった Yotti が縫製工場の社長相手にずっと話をしていたが、
私は内心ドキドキして汗をかいてしまった。
社長はスリングを手にとっていろいろ話を聞いてはくれたが、結局引き受けてもらうことはできなかった。

なぜなら、縫うのにものすごく手間が掛かるから。

私たちが試行錯誤を重ねて作り上げたスリングは、工場にとってはとてつもなく面倒な商品になっていた。
それもそのはず、何しろ私が作るのに 5 時間はかかるのだ。
その縫製工場の社長は、私たちにカシメを打つことや、内職さんを見つけることをすすめてくれたが、
私は正直打ちのめされた気になっていた。
内職さんなんて、どうやって探したらいいんだろう。落ち込む私の横で、
Yotti はなぜか「手ごたえあり」と意気揚々としていた。断られたんだよ?と言っても、
「うまくいったら、また話を聞いてくれるって。
私たちには、きっと工場はまだ早かったんだ。」そう、その工場は今私たちが縫製をお願いしているところ。
私たちの始まりから知っているから、今ではすっかり頼りにしている。
その後、昔からお世話になっていた方に三瓶さんを紹介してもらうことができ、
無事に製造のめどは立つことになった。

強い味方の三瓶さん

三瓶さんは、縫製の超ベテラン。私たちの母よりうんと年上で、
私たちのこのスリングに対する思い入れを、とってもよくわかってくれた。
早速スリングを作ってみて、ポケットに力布をつけたり、ポーチを使い勝手がいいように、色々手を加えてくれた。
ポーチの持ち手も三瓶さんの提案。苦労した両面ポケットも、三瓶さんなら難なくこなせる。
それでも、作れるのは 1 日 2 枚が限度。それも朝 6 時から夕方まで、 1 日 12 時間を費やしてやっとだ。
やっぱりスリングはとても手間がかかる。でも、それだけ私たちのこだわりが詰まっているということ。
どの部分も省けるものはない。
どこまでできるかわからないけれどがんばってみようと、それから特許の出願や開店準備に奔走し、
無事皆様にこだわりの『はぐスリング』をお届けすることができるようになりました。

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